女の子だってやる!

若者文化はながいあいだ「男の子文化」でもあった。とくに高度な身体能力を要求されるスポーツや、さらには暴力的な場面においては、女の子たちはせいぜい見た目のかわいい添え物としてしか関わることができなかった。だが今日では事情は違っている。男の子に声援を送るだけの役割に甘んじる代わりに、少女たちは続々と自分でスケートボードに乗りはじめている。そして残念なことに、極右グループにおいても、「男性の傍に立つ女性」という受動的役割を演じる代わりに、外国人やアウトサイダーに対して自らこぶしを振るう少女たちの数は増え続けている。
ベルリンの旧西側に位置するクロイツベルクと旧東側のフリードリヒスハインを結ぶオーバーバウム橋。その北端は、毎日のように人で混雑している。そこにある都市鉄道の「ワルシャワ通り」駅は通勤のための乗り換え地点であり、フリードリヒスハインの住人をベルリン市の中心部へと運ぶ駅でもある。だが同時に数多くの観光客も毎日ここで電車を降りる。彼らはイーストサイドギャラリーとお洒落なカフェや居酒屋の立ち並ぶ通りを見て、「本来ひとつに属するものが、ついにひとつに発展していく」様子を実感するのだ。観光客たちはまたレヴァーラー通りの前にある、市電のM10番とM13番の走る広場を通りすぎる。しばらく前からスポーツ面でも「ひとつに発展していく」様子が見られる広場だ。ここではスケーターとBMXライダーが一緒に技を練習している。そしてそこには、しばらく前から数人の少女たちも参加しているのだ。彼女たちは少年たちと同様、なんでもないことのように「オリー」や「キックフリップ」といった技を習得し、少年たちと同じ、近所のコペルニクス通りにある「ビッグ・ブローボート」で日本発の最新コミックとともに買った幅の広いストリート・スタイルの服を着ている。すべてユニセックス、すべて問題なし、ということだろうか?
フォー・レディース・オンリー
インターネット上の数々のスケーター向け掲示板を見ると、女子もスケートボードをすることが許されるかどうかについて、さまざまな議論が交わされている。だがこういった議論にうんざりしている者は男子にも多い。「ボー」という名前の20歳の「野郎」(彼自身が自分のことをこう表現するのを好む)が、「フォー・レディース・オンリー」という女性スケーター向けのサイトを作ったのもそのためだ。彼の主張は、スケートボードとはスポーツなのだから、男だろうと女だろうと、自分の好きなように楽しむ権利がある、というものだ。「女の子のあいだでどういうことが起こっているのか知りたいと思ったんだ。それに、スケートをする女の子は、ひとつひとつの町ではまだそれほど多くないから、ネット上でセッションの約束をしたり、情報交換したりするのは有意義だろう。そんなの男にとっては当然のことだけど、女の子にはこれまでそういう場はまったくなかったんだ」と「ボー」は語る。だが最近では事情はかなり変わってきている、と自身も熱狂的なストリートスケーターである「ボー」は言う。「六年前、ESC(注 ヨーロッパ・スケートボード選手権大会)で最初の『ガールズ・ジャム』があったんだけど、そのときの参加者は九人だった。だけど去年の参加者はもう二十四人になっていた。それに小さいコンテストでも『ガールズ・ジャム』のあるものが多いよ。男の子たちが考え方を変えた一番の理由は、たぶんエヴリン・ブイヤール(注 ベルギー人で、現在ヨーロッパ最高の女性スケーター)なんじゃないかな。彼女はとにかくすごい滑りを見せるし、メディアにもよく登場する。だからどんなに頭の固い敵も、口を閉じるしかないんだ」
飛べるようになる
実績のあるドイツ人女性スケーターのひとりに、ローディ・ミュンツェルがいる。彼女にとってもエヴリン・ブイヤールはひとつの偶像的存在だ。だがそんな彼女自身もとうにひとつの偶像となっている。その様子は、ドイツの女性スケーターだけを扱った初の映画であるキム・コッホの「飛べるようになる」に記録されている。この映画でローディと並んで発言するひとりはニナ・ブラウンだ。彼女は初の、そしてこれまでのところ唯一の女性向けスケートレーベルである「スモー」を立ち上げた。(モットーは「Don’t be a pussy, be a Sumo!」)また大学で写真を学ぶ学生であり、スケーターでもあるエスター・フォンプロンも発言する。このキム・コッホのドキュメンタリー映画では、男子による差別や女性蔑視についても取り上げられるが、それらは周辺テーマに過ぎない。この映画はもっと広い視野を持ち、知的でユーモアに溢れた方法で、現代フェミニズムの形式と理解、個人の自由、さらにはアイデンティティの探求といったテーマを扱っている。「飛べるようになる」はケルン・メディア芸術大学大学院の卒業製作映画。「ある記事を読んでこのテーマにぶつかりました。なんだか、自分も少女時代に考えていたさまざまな重要な問いに、うまく合うような気がしたんです。その問いとは、人生をどうやって切り開けばいいのか、自分の人生とはどれくらい自分で決めることができるのか、身体的なものも含めて限界はどこにあるのか、どんなふうに挫折するのか、そしてそういうことがすべて、既存の性的役割分担や、性に関するステレオタイプのイメージや、自分自身のアイデンティティへの問いとどんな関係があるのか、というものでした」この映画を製作した動機について、キム・コッホはこう語る。さらにコッホは、かなりの良い反響があったとも言う ― さまざまな映画祭においては。だが一年半にわたる宣伝期間中、コッホは放送局員たちからさまざまな批判を聞かされることになった。「飛べるようになる」の社会的、政治的な意義は、突然「男の国の女たち ― いや、もうこのテーマは勘弁してくれ!」や、「この話には意味があるの?」といった短絡的なコメントの背後に押しやられてしまったかのように思われる。最近、ついにある放送局がこの映画に興味を示したところだ。ドキュメント映画専門のデジタル放送局だ。
全体的に見て、「少年文化のなかの少女」というテーマの研究や記録は、ドイツではまだ英米ほどには進んでいない。1990年代のポップカルチャーの一大現象だった「ライオット・ガールズ」も、若者たちの世界を震撼させたのはほんのわずかな期間に過ぎない。だが、彼女たちは存在するのだ。社会学者や若者研究者は、ストリートアート・シーン全体を少女たちが征服していると確言しており、これを女性解放の活動として肯定的に評価する。これに対して、暴力行為に及ぶ極右の少女たちの場合も女性解放だと言えるのかどうかについては、まだはっきりとはしていない。
右翼シーン
「ハルバーシュタット出身の21歳の極右の女性が、別の女性を襲撃し、殴りかかる」という記事が、2007年12月、ふたたび新聞各紙に載った。最近の調査では、右翼シーンにおける少女や成人女性の暴力的傾向が深まっているという。「約五万人と想定される右翼組織の構成員のうち、ほぼ半数近くが女性であり、すでに極右の犯罪の十パーセントは女性によるものです」社会学者のミヒャエラ・ケッティヒ氏はそう語る。ケッティヒ氏によれば、問題なのは、右翼の女性たちは多種多様であり、さまざまな役割を担っているため、本来なら「解放された女性」だと捉えられてしまうことだという。若い女性のなかには、右派政党であるドイツ国家民主党に入党して役職に就くのみでなく、意図的に教育家やソーシャルワーカーになって、職業を通して若者に対する政治的影響力を持とうとしたり、メクレンブルク州で「家族の日」を主催して、乳児用品と同時にイデオロギーも売ろうとする者もいるという。「見逃されがちなのは、こういった女性たちが自覚的に、自分の意志で政治活動家になったり、犯罪者になったりしている点です」2007年9月にこのテーマに関してロストックで開かれた学会で、ケッティヒ氏はそう述べた。女性解放であるかどうかはともかく、女性スケーターたちも若い右翼女性たちも、ふたつのサブカルチャーの場で、性的役割やその構造との関わりにおいてそれぞれ独自の戦術を発展させてきた。突き詰めていけば、どちらも既存の社会状況に対するひとつの抗議の形式だ。だがまさにその社会こそが、同じように多彩な戦術を使って、一方にはさらなる自由への余地を与え、もう一方の自由を食い止めなければならないのだ。
| 参考図書:
Gabriele Rohmann (Hg.): Krasse Töchter. Mädchen in Jugendkulturen. Archiv der Jugendkulturen Berlin, 312 ページ, 2007年8月. ISBN: 978-3940213372. Sonja Eismann (Hg.): Hot Topic. Popfeminismus heute. Ventil-Verlag, Mainz 2007年10月, 300 ページ. ISBN: 978-3931555757. Holger von Krosigk/Helge Tscharn: Absolute Beginners. Skateboard Streetstyle Book 1. 160 ページ, Berlin 2000年. ISBN: 978-3-932170-42-3. Holger von Krosigk/Helge Tscharn: Elements of Street. Skateboard Streetstyle Book 2. 160 ページ, Berlin 2003年. ISBN: 978-3-932170-66-9. Holger von Krosigk/Helge Tscharn: Alles über Skateboarding. History, Basics, Tricks, Material. 176 ページ, Berlin 2006年. ISBN: 978-3-932170-93-5. Renate Feldmann: Braune Schwestern? Unrast-Verlag, 144 ページ, 2005年3月. ISBN-13: 978-3897718098 Michaela Köttig: Lebensgeschichten rechtsextrem orientierter Mädchen und junger Frauen. 402 ページ, Psychosozial-Verlag, 2005年5月. ISBN: 978-3898062343 |
少女時代にはまだスケーターとしてのキャリアを進む勇気がなく、代わりにジャーナリストになった。
翻訳 浅井晶子
著作権:ゲーテ・インスティテュート、オンライン編集部
2008年2月

















