私たちが気候を救う– 世界を救うための信頼できる手引き書

「気候変動なんて起きていない、とまだ思っているのなら、この本は読まないでほしい。この本は、自明な事柄に関して証拠を並べたりはしない。気候変動はとっくに生じているのだ」。「私たちが気候を救う」は、このような書き出しで始まる。しかし、泣き言が書かれているわけではない。なぜなら、「私たちが行動さえ起こせば、最悪の事態はまだ防ぐことができる」からだ。
トラルフ・シュタウド、ニック・ライマーによるこの本は 2007 年に初版が出て、半年で 10,000部売れた。反響は熱狂的なものだった。「環境保護活動にたずさわる人間の意欲を非常に刺激する本である。最悪の事態はどうすれば防ぐことができるかを示すアイデア、ヒント、プロジェクト、そして提案がいっぱいに詰まっている」と WWF の環境問題専門家は述べている。「リテラトゥーレン」誌も、「説得力のある主張、しっかりとした調査に裏打ちされた本。ようやく、責任の所在をズバリと言い当てた本が出た」と賞賛。2人の筆者が期待を託している先は、読者であり、政治家ではない。政治家は筆者の目には信頼に足る存在とは映っていないからだ。「ドイツは、行動の予告に関しては世界一だ。だが実行に移すという点では話にならない」。筆者は、1980 年代以降、歴代のドイツ政府は産業界に妥協し続けてきた、と指摘する。あまりにも多くの排出権を与え、自動車産業を保護し、多量の CO2 を排出する自動車の生産を続けさせた。航空会社は一度も燃料税を払わずに済み、電力会社は古い火力発電所を使い続け、新しい火力発電所の建設許可を受けてきた。筆者は、気候を救うことができるのは我々だ、と読者に呼びかけ、自ら行動に出よう、と促すのである。
列車に乗って気候変動会議へ
環境ジャーナリストのシュタウドとライマーは、ともに一流のメディアで経験を積んできた。トラルフ・シュタウドは、週刊高級紙「ディー・ツァイト」で長年政治局記者をつとめ、2006 年以降は「グリーンピース・マガジン」のためにフリーのライターとして執筆している。ニック・ライマーは 1989 年、当時の東ドイツで環境専門誌「エコストロイカ」 を立ち上げた。これは旧東ドイツで初めて全国規模で発売された環境専門誌となった。現在はベルリンの taz紙で経済局の記者をしている。2007年の冬、ライマーはドイツを留守にしていた。気候変動会議に参加するため、バリ島に向かっていたのだ。列車に乗って。「6,000 人の外交官、学者、大臣、ロビイスト、環境保護活動家とジャーナリストが飛行機に乗ってインドネシアの島へ向かった。そして、一人当たり列車に乗っていく場合の5倍もの規模の負荷を環境にかけたのだ」とライマーは批判する。列車に乗って行くことで、彼は他の選択肢もあることを身をもって示そうとしたのである。
「気候を救う者」であるライマーとシュタウドは、自分たちが扱うテーマに自ら個人的にも取り組み、アイデアを実践している。本の出版も、カーボンニュートラルに行われた。「調査、印刷、販売時に排出された CO2は、ほかの部分で相殺した。つまり、出版社と筆者は、カーボンニュートラル・エージェントの『アトモスフェア』に、排出したCO2に相当する金額を支払ったのである」。さらに、ライマーとシュタウドは筋金入りのエコ電力ユーザーでもある。二人が使っているランプやコンピュータは、太陽熱、風力、水力、バイオマスで発電された電力で動いている。自分たちにできるなら、読者にもできる。それが二人の姿勢だ。実際、彼らの提案はすべてとても簡単に見えるので、この本を読めば誰でもさっそく気候を救おうという気持ちになってしまう。
万人のための排出量取引
2020 年までに、CO2 の排出量は半減できる、と二人は確信している。そのためにはCO2 に値段をつけ、再生可能なエネルギーを使用して他のエネルギーは節約し、多くの飛行機を格納庫にしまったままにしておくことが必要だ。具体的には、各人に一定量のCO2排出権利を与える仕組みを導入する。例えば飛行機に乗るときに発生する規定を超える CO2 排出については、追加の炭素ポイントを購入するか、それまで貯めておいたポイントから使う。炭素ポイントは、クルマを持たない、あるいは省エネハウスに暮らすといったことで貯めることができる。貯まったポイントは売却して利益を得るか、あるいは飛行機に乗るときに使うことができる。こうすれば、排出量取引は誰にとっても魅力のあるものになり、気候にやさしいライフスタイルは利益をもたらすものとなる。
気候に非常に大きな負荷をかけるものが相手の場合のみ、シュタウドとライマーはうれしくない結論を突きつける。例えば飛行機。この場合の二人からのアドバイスは「なるべく使わない」。食料に関しても、二人は節約を奨励する。人々が肉食を控え、もっと有機食品を食べれば、CO2 の発生をかなり抑制することができるはずだ、と彼らは言う。根拠として挙げられているのが、国連食糧農業機関 FAO による試算である。それによれば、世界の畜産業が温室効果に及ぼす影響は18 % にのぼる。こうしたアドバイスは、人々の分別ある行動と禁欲に訴えるものだけに、読者にとってはおもしろくない提案だろう。しかし、これ以外の提案はすべて、実行しやすいものばかりだ。たとえば、エコ電力会社から電力供給を受ける。そのほうが、従来型の電力会社の場合よりも電力料金が安くなる場合すらある。クルマを買うときには省エネモデルを選ぶ。家の断熱を改善する。家電製品を買うときには省エネタイプのものにする。パッシブハウスと最新のヒートポンプを使う、などなど。これらはすべて、家計にもやさしい方法ばかりである。
「この本をほかの人に渡す」
最終章には、10項目からなるプランが挙げられている。そのうちの9項目がこの言葉だ。「この本をほかの人に渡す」--喜んで!このプランは誰にでも実行できるし、説得力がある。絵空事が描かれているのではないのだ。どの提案も徹底的な調査に裏打ちされているだけでなく、すでにその正しさが立証されているものばかりなのである。シュタウドとライマーが提案する「万人のための排出量取引」は、イギリスの外務大臣がずいぶん前から説いて回っているものだし、サハラ砂漠に太陽熱発電装置を設置し、ヨーロッパへの電力供給源とする、という提案も、ソーラーエネルギーの専門家によって何年も前から言われていることだ。しかしこれらの大きなプロジェクトが実現できるかどうかは、各国政府の政治的な意志にかかっている。だから、シュタウドとライマーは読者一人一人に訴えるのだ。客観的で、ユーモアをたくさん盛り込み、攻撃的な姿勢はほとんどなく、常に実用的で、読者を引き込むようにとても上手に書かれている。楽しみながら理性をもって世界を救おうとするおもしろい本である。
| 参考文献
トラルフ・シュタウド、ニック・ライマー著 |
環境と社会問題を重点的に扱うジャーナリスト、作家
翻訳:WORTwelt
Copyright: Goethe-Institut e. V., Online-Redaktion
2008 年 2 月














