「100%地域」 - 地方自治体発のエネルギーシフト

目標は自給自足。大規模な火力発電所には頼らない。原子力発電所などもってのほか。「クリーン」で再生可能なエネルギーの確保をめざす地方自治体が増えている。
「再生可能エネルギー100%地域」は、地域で使用するエネルギー源を長期的には完全に風力・水力、太陽光、バイオガスに切り替えることをめざす地域・地方自治体を特定してフォローし、ネットワークで結ぶプロジェクトである。現在、この目標を掲げる郡、市町村、地域は100以上あり、その数は増える一方だ。
ドイツ全国いたるところで、自治体のエネルギーコンセプトのありかたに市民が知恵をしぼっている。大手電力会社との長期契約は解除。可能な限り、連邦、州、EUからの補助金を申請する。発電施設の建設も盛んだ。緑の野にはウィンドファームが誕生し、家々の屋根にはソーラーパネルが取り付けられ、農家ではバイオマスを利用したガスで暖房や温水がまかなわれる。
原動力は苦しい財政状況
こうした動きを支えているのは、連邦環境省によって全国レベルで展開されている気候変動防止イニシアティブである。気候変動防止と並んで、エネルギーシフトを進める最も重要な原動力となっているのは、苦しい財政状況だ。化石燃料価格は上昇の一途をたどり、電気料金の決定は大手電力会社に握られ、地方自治体の財政は火の車。こうした事情から、地域でのエネルギー供給を実現することで、支出の削減をめざす自治体が多いのである。
そのひとつが、ブレーメンとクックスハーフェンの間に位置するオスターホルツ郡だ。同郡内に7つある自治体のうちのいくつかは、赤字財政に苦しんでいる。だからこそ自治体は投資を、それもエネルギーへの投資を進めている。およそ12万人の住民が現在エネルギーのために支払っている金額は、年間約1億5,000万ユーロ。同郡の郡庁所在地であるオスターホルツ=シャルムベック市のマルティン・ヴァーゲナー市長にとって、この現状はもはや看過できないものだ。「このままでは購買力がただ外に流れ出てしまうだけです。資金が郡に戻ってくるよう対策をまとめなければなりません」。 プロジェクトの名称は「エネルギーシフト2030」。再生可能エネルギーは、現在のところ電力需要のわずか8%、暖房需要のぎりぎり1%をまかなっているにすぎない。同郡と自治体がめざすのは、2030年をめどにエネルギーの自給自足を実現することだ。この取り組みに対し、同郡は2010年6月に「エネルギー自治体」としての称号を獲得した。
自給自足の自治体がエネルギーを販売する
「エネルギー自治体」という称号は、自治体による模範的なエネルギープロジェクトに対して、再生可能エネルギー・エージェンシーが授与するものである。同エージェンシーの情報ポータルサイトを見れば、オスターホルツ郡の優れた取り組みが例外的なものでないことがわかる。例えば、ラインラント=プファルツ州にあるライン=フンスリュック郡だ。ついこの間まではこれといった発電能力を持たなかった同郡は、いまや再生可能エネルギーによって年間1,120万ユーロを上回る収入を得ている。およそ1,500もの再生可能エネルギー発電施設では、すでに電力需要の2/3をまかなえる電力が生産されている。認可された風車だけでも、消費電力を約50%上回る電力が生産できるのだ。近いうちに電力を外部に販売することが目標である。
外部への電力販売をすでに行っているのがディートマルシェン郡だ。北海に面した沿岸部に位置する同郡は、風力と太陽光による再生可能エネルギー生産に明らかに有利な場所に位置している。認可された風力発電設備の数は971基と、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の風力発電でトップである。現在のところ759基が設置され、定格出力は540メガワットとなっている。
電力網と高性能の蓄電設備
規模の大きい都市も、これらの「100%地域」に加わっている。例えばバンベルク市は、郡と気候連合を結成し、自らの持つ潜在力を徹底分析して共同での土地利用計画に生かそうとしている。次なるステップとしては、市と郡のエネルギーコンセプトが作成されることになっている。「再生可能エネルギーの分野での潜在能力と、そこから生まれる経済的なチャンスを認識する地域はますます増えています」と、再生可能エネルギー・エージェンシーのイェルク・マイヤー事務局長は言う。
こうした自給自足ブームに批判的な人たちからは、自治体は結局、その周辺にある「電力湖」、すなわち大手電力会社の電力網に頼らずにはいられないはずだという声が聞かれる。再生可能エネルギー源(風力、太陽光)からのエネルギー供給が途絶える事態が生じた場合には、既存の電力網から電力が供給され、安定した電力供給が確保されることになるからである。これは、100%プロジェクトの運営サイドも認識しているところであり、独自の電力網を構築することにいっそう力を注いでいる。それでも残る問題がある。風車とソーラーパネルという天候の変化に影響される設備からの電力供給が今後さらに増加することになれば、高性能の蓄電設備の建設を急がなければならないということである。
フリージャーナリスト。ベルリンでテキスト・デザインエージェンシーを主宰 (www.thomas-ppr.de)
翻訳: 中村 有紀子
Copyright: Goethe-Institut e. V., Online-Redaktion
2011 年3月













