ホモセクシュアルでだんご鼻の、小さな男コミック作家 ラルフ・ケーニヒ

朝の9時、ドイツのとある寝室で目覚ましのラジオが鳴り響く。「WDR2のニュースです。早朝、デュッセルドルフの中心街で2個の原子爆弾が爆発しました。」これで起こされた人物はぎょっとして飛び上がる。「失礼しました。早朝、中心街で自動車に仕掛けられた2個の爆弾が爆発しました。」
この荒っぽくひどくこっけいなシーンから、短編コミック『波瀾万丈の男』(1987)は始まります。これは、1960年にゾースト(ヴェストファーレン)で生まれたコミック作家、ラルフ・ケーニヒのもっとも知られた作品です。ケーニヒは、家具職人の見習い修業を経た後、大学で芸術学を修了しました。最近ではケルンに住むこのユーモリストは、ドイツ国内外を問わず非常に有名なコミック作家です。多方面からの受賞歴を持つ彼の作品は、これまでに11の言語に訳されており、全世界での発行部数はおよそ550万部に達しています。また長編のコミック作品のうち、4つが今日までに映画化されました。なかでも1994年に完成し、連邦映画賞を受賞した『波瀾万丈の男』の映画作品(ゼンケ・ヴォルトマン監督)は、ドイツ語圏だけでも650万人の観客を集め、ドイツ娯楽映画の全時代を通じてもっとも成果をあげたものの一つに数えられています。だんご鼻の小さな男 ラルフ・ケーニヒの成功は、おもにストーリーの質に基づいています。絵については、彼のコミックはクレア・ブレテチャー(1940- )やジャン=マルク・ライザー (1941-1983)といったヨーロッパ作家を手本としています。彼のスタイルとして典型的なのは、わずかな線で描くだんご鼻の小さな男です。さらにケーニヒは、表現方法も極力シンプルなものにしており、話の筋は第一に、登場人物たちの会話とモノローグを通して展開していきます。 こうした演劇的な要素で構築されているため、ラルフ・ケーニヒのコミックはまたとくに、舞台やスクリーンへの改作に適しています。寡黙なニューヨークの警察官、ルイジ・マカロニをめぐる、二冊の不気味なハードボイルドの絵物語――『キラーコンドーム』(1989)と『骨の髄まで』(1990)――にいたっては、ケーニヒは初めから「だんご鼻のホラー映画」として構想しており、映画作品にふさわしいタイトルとクレジットを与えたのでした。『キラーコンドーム』は、人形劇版(1992)が何年にもわたってドイツの舞台で成功をおさめた後、1996年についに映画化されるにいたりました(マルティン・ヴァルツ監督)。
ドイツにおけるホモセクシュアルの日常
ケーニヒの成功にとって重要なもう一つの理由は、全作品を貫いているホモセクシュアルの主題化です。1979年以降、風刺雑誌やローカル誌で、ケーニヒの初期の短編ギャグ漫画が見られるようになりましたが、これはドイツにおけるホモセクシュアルの日常をドキュメントとして描いたものでした。口ひげをはやした同性愛の男・ノルベルトとヴァルター、黒いレザーパンツに身をねじこんだ筋肉隆々の土木作業員、長い付き合いのカップル・コンラートとパウル、息子の性的嗜好について何も知らない、心配性のグレートマザー…彼らは皆、ケーニヒの混沌とした恋愛コメディの風変わりなメンバーです。そして、ラルフ・ケーニヒのほとんどのコミックに見られるモチーフとして、突然ドアフレームから現れて状況を解説する全裸の男がいます。部屋での会話は唐突に終わり、全員の口が開いたまま、そこで説明の時間が始まるのです…。
魅力的なシチュエーション・コメディ
ラルフ・ケーニヒのユーモアは、決して乱暴だったり人を傷付けたりするものではありません。彼は自らのストーリーを、鋭いジョークと、魅力的なシチュエーション・コメディに対するすばらしいセンスとをもって語るのです。ドイツで、80年代の半ばから末にかけて――つまり、エイズに対するはっきりとした不安の時代に――発行された彼の著作は、ステレオタイプを用いたものだったにもかかわらず、国民の大部分に同性愛者が受け入れられていくための力となりました。また彼の作品は、ドイツにプロのコミック作家というカテゴリーが成立し、発展していくことにとっても同じように意義あるものとなったのでした。 ラルフ・ケーニヒ最新の長編コミック作品である『JAGO(1998)』は、『リジストラータ』(1987、映画化:2002)同様、古典文学のテーマに手を加えたものでした。コミックの仕事の傍ら、ラルフ・ケーニヒはまた映画用のシナリオも書き、自身のコミックの舞台台本にもかかわっています。
作家、批評家、インターネット・カルチャーマガジン satt.org の編集者。
著作権:ゲーテ・インスティテュート、オンライン編集部
2003年10月

















