不服従は義務? 市民運動に見るドイツの市民的不服従

ヘルゴラント島に向かい
ヘルゴラント島に向かい | 写真:© picture alliance / dpa

市民的不服従は、抗議活動の形態として、ドイツ社会にしっかり根を下ろしている。ある島の歴史を大きく塗り替えた1950年のセンセーショナルな事件から、振り返ってみよう。

北海に浮かぶドイツの島、ヘルゴラント島。第二次世界大戦後、この島の運命は永久に定まってしまったかに見えた。空爆で完全に破壊され、住むことはできなくなり、生き延びた島民は島を退去。無人となった島は、イギリス空軍の爆撃練習場として使われていた。

1950年のクリスマスのころ、こうした状況に抗議して、二人の学生、ゲオルク・フォン・ハッツフェルトとルネ・ロイデスドルフが、ヘルゴラント島に向かい、同行した少人数のグループと共に、島を「占領」した。1951年1月3日、彼らは逮捕され、陸地に戻された。しかし、このセンセーショナルな行動は、ドイツ、イギリス両国の世論や議会を動かし、やがてヘルゴラント島はドイツに返還され、島の復興が始まることとなった。

原発に反対し、平和を求めて

「市民的不服従」とは、市民が抗議のために、覚悟のうえで法律を犯すことだ。ドイツでは1970年代半ばから盛んになった。1975年2月18日、数百人のデモ隊が、バーデン地方、ヴィール・アム・カイザーシュトゥールの原子力発電所建設予定地を占拠。警察の放水によってデモ隊は排除されたが、反対派は決して諦めなかった。原発建設反対運動は何年にも及び、最後には勝利を勝ち取った。ヴィールはこうして、ドイツにおける反原発運動のシンボル及びモデルとなった。脱原発を決定した今日でも、ニーダーザクセン州、ゴアレーベンに核廃棄物最終処分場を建設する計画に反対する抗議活動、また毎年「カストール」という特殊容器に入れて、核廃棄物をゴアレーベンに既に建設されている中間貯蔵施設へ搬入することを阻止しようとする抗議活動は継続しており、ヴィールはこうした抗議活動のシンボルとモデルであり続けている。活動家は定期的に、核廃棄物の輸送に使われる鉄道のレールに自分のからだを結び付けたり、レールの下を掘ったりして、輸送を阻止しようとしている。 1979年12月、戦略核兵器増強に関して、NATOが「二重決定」を下したときも、市民的不服従による大規模な抗議活動が行われた。1983年春には、ドイツ全土で、デモ隊による軍事施設の封鎖が続いた。1983年9月のムートランゲン米軍基地前の座り込みには、多くの著名な学者、芸術家、作家が参加し、世界の大きな注目を集めた。ハインリッヒ・ベルやギュンター・グラスも参加していた。

大規模インフラ工事に抗議

ドイツでは、大規模インフラ工事への抗議活動でも、市民的不服従を実践する伝統がある。例えば1980年代のフランクフルト空港「西滑走路」新設反対運動では、デモ隊が「反対小屋」の村を作って、空港の拡張を阻止しようとした。最近では特に、シュトゥットガルト駅整備計画「シュトゥットガルト21」に対する反対運動を忘れてはならない。反対派はシュロッス公園を占拠し、警察は多数の放水車を投入して、ようやく事態を収拾した。
 
2010年9月30日、シュロッス公園から排除されるデモ隊(Youtube)

市民の激しい抗議活動によっても、結局、シュトゥットガルト駅整備計画を阻止することはできなかった。しかし、調停会議の過程で、計画は詳細に至るまで開示され、議論が尽くされ、計画の一部変更が行われた。計画を続行するかどうかについての判断は、最終的には住民投票による決定に委ねられた。

「危機」に対する怒りと連帯の表明

2008年から金融危機が世界に波及し、民主主義のしくみを世界各地で破壊するかのような「金融帝国主義」に対して、ドイツでも抗議運動が起こった。2012年春、活動家たちは、国際的な「占拠運動」と共闘しようと、フランクフルトの欧州中央銀行の向かい側にテント村を作った。このテント村は、2012年5月16日に警察によって排除された。
 
フランクフルト、テント村の排除(2012年5月16日)

2013年5月末には、ドイツのいくつもの都市で、新たに「ブロッキュパイ」グループの抗議行動が起こった。「ブロッキュパイ」とは、封鎖(Blockade)と占拠(occupy)からの造語だ。このグループは、国際金融経済をさらに厳しく管理することを求め、ギリシャやスペインなど、金融・通貨危機やEUに義務付けられた緊縮政策で苦しむ国々の市民に、連帯を表明した。

最近、特にベルリンでは、住居からの強制退去に抗議する市民的不服従が見られるようになった。住宅所有者がローンを支払えなくなった場合、例えばスペインでは、住宅は銀行に取り上げられ、所有者にはローンだけが残るのが普通だ。しかしドイツでは、借家人が影響を受ける場合が多い。金融危機により、ドイツでも不動産価格が一部で高騰した。それでも国際的にみれば、ドイツの不動産は、高利回りを求める投資家にとって、いまだに魅力的な投資先だ。とくに住居を高級感たっぷりにリフォームして、それまでよりずっと高い家賃で賃貸すれば、大きな利益が期待できる。高額で転売すれば、利益はさらに大きくなるというものだ。

不服従は市民の義務

市民的不服従とは、市民が自分の良心に従い、法律に背いて、自分たちの感じている、あるいは実際に存在する不正を正そうとするものだ。処罰されるようなことがあれば、甘んじてこれを受ける。不服従活動をする市民は、現在の秩序の破壊を求めているのではなく、基本的には秩序を尊重し、むしろ抗議活動によって秩序を盤石のものにしたいと思っている。したがって彼らにとって、市民的不服従は市民の義務なのだ。

ところが最近は、市民だけではなく、「非市民」による市民的不服従運動も増加している。担い手は、ドイツに保護を求める難民だ。2012年の初めごろから、難民たちは町の中心部にテント村を立てたり、大使館を占拠したりして、定期的に抗議活動を行っている。抗議の対象は、難民用共同住宅に収容されることや、難民認定までの期間、行動の自由を制限する現行のドイツの難民法だ。2012年9月には、バイエルン州のヴュルツブルクからベルリンまで、デモ行進が行われた。2013年も、ドイツの多くの都市で、難民が公共スペースにテント村を作り、自分たちの窮状に目を向けるよう訴えている。