ディー・シュテルネ 色を変えるカメレオン。でも語るのは、いつも真実。

ディー・シュテルネ
ディー・シュテルネ | 写真:© Die Sterne Tourankündigung, Col Zoom

ハンブルクのバンド《ディー・シュテルネ》は、1980年代末から、派手さや激しさがなくても社会批判はリスナーの共感を得られることを、身をもって示してきた。彼らの方法は、社会システムに対するやり切れない思いを、ファンク、ヒップホップ、ソウルで、さりげなく包むことだ。2010年以後は、そこにスウィングするディスコビートも加わった。

「熱くなるのは、ごめんだね。なす術もなく、害もなく。でも、熱いのだけは嫌なんだ。死人は邪魔せず、主張せず。ただ、あいつらみたいに阿呆じゃない」初期のシングルFickt das System「システムをファックしろ」(1992)で、《ディー・シュテルネ》は、こんな風に歌っている。ドイツ語で歌うハンブルクのバンドの集団「ハンブルガー・シューレ」の生みの親でもある《ディー・シュテルネ》の登場で、1990年代初め、ドイツのポップ・ミュージックは、再び、人々が安心して日常の話題にできるものになった。純粋なポップやギターロックに集中した《トコトロニック》や《ブルームフェルト》と異なり、《ディー・シュテルネ》は、特にファンクを目指した。

最初の二つのアルバムWichtig 「大事なこと」(1993)とIn Echt「現実は」(1994)を発表すると、《ディー・シュテルネ》は、ドイツの音楽業界で、かの《トーン・シュタイネ・ウント・シェルベン》の後を継ぐバンドだと高く評価され、Universal Tellerwäscher「ユニバーサルの皿洗い」 In Echt「現実は」、1994)でヒットチャートの仲間入りを果たした。1970~80年代に、《トーン・シュタイネ・ウント・シェルベン》のヴォーカル、リオ・ライザーは、剥き出しの過激さで人々を魅了したが、《ディー・シュテルネ》のヴォーカル、フランク・シュピルカーは、人生についての考察や社会への批判を、比喩に包んで表現する。Das bisschen besser「少しだけまし」(Wo ist hier「ここはどこだ」、1999) から引用しよう。「そして人は、暗闇の中を手探りで進む。暗闇は何かを約束してくれるからだ。そこにないのは、光だけ」

1990年代終わり、《ディー・シュテルネ》は、ラージュ・ドール(ハンブルクのインディーズ・レーベル)からイギリスのヴァージン・レコードに移籍し、またゲーテ・インスティトゥートの招きで北米ツアーを行った。その後は、バンド以外の仕事やソロ活動も含め、多方面で活躍している。中核メンバーはフランク・シュピルカー(ギター)、クリストフ・ライヒ(ドラムス)、トーマス・ヴェンツェル(ベース)の3名。キーボードは、スタート時にはフランク・ヴィル、その後、リヒァルト・フォン・デア・シューレンブルクが担当した。ゲストを招いたのは一度きりで、5枚目のスタジオアルバムDas Weltall ist zu weit 「宇宙は遠すぎて」(2004)の収録時。このアルバムは従来に比べて政治色が強く、《トムテ》のヴォーカル、テース・ウールマンや、《フェッテス・ブロート》及び《ヴィア・ズィント・ヘルデン》のヴォーカル、ユーディット・ホロフェルネスが、その考えを歌っている。それに続くアルバムRäuber und Gedärm 「強盗とはらわた」(2006)では、再び自分たちの音楽のルーツに戻り、社会全体への批判だけではなく、シュピルカーらしい、一つ一つのものを皮肉な視線で捉える音楽が、確かな場所を占めている。 

幻想世界へ進むのか?

2010年、《ディー・シュテルネ》は、プロデューサーのマティアス・モディカと共に、音楽のパラレルワールドに飛び出した。

新しく作られた10個のトラックでは、ギターソロに代わって、ループやエレクトロビートが優勢だ。「ディスコのありきたりな感じに、引かれるんだ」と、シュピルカーはターゲスシュピーゲル紙のインタビューで告白している。「1980年代には、パンクは良くて、ディスコはダメだと言う、昔ながらの否定的な見方があって、僕もそれを信じていた。でも、ある時、ふと気が付いたんだ。あの偉大な《ブロンディー》だって、すごくパンクだったけど、同じくらい、すごくディスコでもあったってね」

2010年に出したアルバム24/7で、《ディー・シュテルネ》は、リスナーを灰色の日常から逃避させようとしているかに見える。確かに、心浮き立つビートは、脳味噌と脚を完全にトランス状態に持って行く力がある。しかし、その底に隠されているのは、今まで通り、真実だ。Depressionen aus der Hölle「地獄の憂鬱」で、シュピルカーは、自己最適化社会の宗教がかったお題目を歌い、Deine Pläne「君の計画」では純粋な快楽主義を祝福し、ノリの良いConvenience Shop 「コンビニ」では、サービス過剰社会を、こんな風に皮肉っている。「いらっしゃいませ。何にいたしましょう。俺たちは、君のコンビニ。俺たちは、君の奴隷」

こうして《ディー・シュテルネ》は、本物が「ギター、ドラムス、ベース」というロマンティックな理想の組み合わせからしか生まれないのではなく、ディスコもロックンロールと同じくらい本物であることを示している。しかし、2014年に発売予定の10作目のスタジオアルバムが、24/7と同じ道を行くかどうかは分からない。ひょっとすると10作目は、これまでのヒットを収録しなおしたミニアルバムFür Anfänger 「ビギナー向け」(2012)と同じ方向に向かうのではないだろうか。それとも、サルサやジャズを取り入れて、リスナーの気分を変えようとするだろうか。《ディー・シュテルネ》の場合は、本当に何が飛び出すか分からない。一つだけ確かなことは、彼らには、うっとりするほど嘘がないということだけだ。
 
Was hat dich bloß so ruiniert? 「何がお前をこんなにしたんだ?」この曲は、"朝日のあたる家"への《ディー・シュテルネ》のオマージュとして有名だ。
 

ディスコグラフィー 《ディー・シュテルネ》

  • Wichtig「大事なこと」 (1993)
  • In echt「現実は」(1994)
  • Posen「ポーズ 」(1996)
  • Von allen Gedanken schätze ich doch am meisten die interessanten 「やっぱり面白い考えが一番さ」(1997)
  • Wo ist hier 「ここはどこだ」(1999)
  • Irres Licht「不思議な光」(2002)
  • Das Weltall ist zu weit「宇宙は遠すぎて 」 (2004)
  • Räuber und Gedärm「強盗とはらわた」(2006)
  • 24/7 (2010)
  • Für Anfänger 「ビギナー向け(ミニアルバム)」(2012/ Mini-Album)