究極の選択 SABU監督の「天の茶助」

天の茶助
天の茶助 | 写真:© Sabu

ベルリン国際映画祭には「コンペティション部門」と呼ばれる部門がある。そこで上映されるのは過去1年以内に制作された新作映画。

毎年20作ほどの優れた映画が世界各国から集められる。そんな選ばれた作品が集まる部門からは、本映画祭での最高の栄誉となる金熊賞が選出される。出品作品の上映には多くの人やメディアが集まるため、本部門はベルリンでの映画祭のハイライトとも言えるだろう。

映画祭8回目の参加となるSABU監督

今回日本からはコンペティション部門に「天の茶助」が出品された。監督は90年代後半から多くの映画のメガホンを取るSABU。1996年に制作された初監督作品の「弾丸ランナー」を出品して以来、本映画祭に幾度も参加しており、2000年の作品「MONDAY」では国際批評家連盟賞を受賞している。このように本映画祭の常連である監督だが、今回初めてコンペティション部門への出品となった。8回目の参加にして遂に大舞台に立つことになったのだ。

人間の運命を描く作品

SABU監督の「天の茶助」はファンタジーを織り交ぜたエンターテイメント作品。天界には地上の人間の運命を決める脚本家がおり、主人公の茶助は彼らのお茶汲み係をしている。そんな彼は脚本家が決めてしまった1人の少女ユリの運命を変えるために地上へと向かう。彼が地上で引き起こすのは、人々の運命を変えたことによる様々なトラブル。映画では多くの問題に挫けることなくユリの運命を変えるために奮闘する茶助の姿が描かれている。

高い娯楽性を持った作品

本作品の特徴となるのは誰もが楽しめるように考えられた高い娯楽性。随所に散らばれたユーモラスなシーンは笑いを誘う。またアクションシーンも盛り込まれており、手に汗握る展開で見る者を楽しませる。映画はこのように良くできた娯楽作品であるにも関わらず、それに留まることはない。なぜなら監督の思いが明確に打ち出されているからだ。それは「運命は意思によって変えられる」という考え。本作品は誰もが楽しめるものであるからこそ、その思いは多くの人に伝えられるのだ。

映画祭の常連監督として名を残す

多くの注目が集まるなか、2月14日に第65回ベルリン国際映画祭の金熊賞が発表された。賞を獲得したのはイランのジャファル・パナヒ監督の「タクシー」。残念ながら「天の茶助」は賞の獲得を逃した。だが時間を忘れて楽しむことができる、明確なメッセージを感じさせる本作品は、多くの人を魅了したことだろう。そして本映画祭の常連となったSABU監督の名前はベルリンの人々の胸に深く刻まれたに違いない。