アート・ハッキング 真鍋大度とRhizomatiks Research

Rhizomatiks Research × ELEVENPLAY
Rhizomatiks Research × ELEVENPLAY | © Rhizomatics Research

ドローン・インスタレーションから、3Dスキャン、ボディハッキング、そしてスニーカーから聞こえる音楽まで― Rhizomatiks Researchの発明は常に新しい基準を作り出し、日本のアート・ハッキングのパイオニアにも目を向けている。

テクノロジーとアートを融合して新しい表現を提示する、メディアアートの作品の数々。国民的な歌番組である「NHK紅白歌合戦」で、メディアアート的な演出が用いられて話題となったのは数年前。人気テクノポップユニットPerfumeのステージで、小型の無人ヘリ「ドローン」が宙を旋回。三人組のアイドルによるダンスの演出をライトが内蔵されたドローンがソリッドにライトアップして惹き立てた。その前例のない演出によって日本中のお茶の間が湧いたのは記憶に新しい。
 
プログラミングで制御されたドローンを操るのは、真鍋大度と石橋素率いるR&D・メディアアートチームのRhizomatiks  Research(ライゾマティクス リサーチ)。ドローンが注目される矢先に、誰もが思いつかなかった発想で作品へと昇華したいち早い取り組みだ。
 


エンターテイメントの世界で用いられたテクノロジーは、コンテンポラリーダンスにも適応される。ダンスカンパニーELEVENPLAYによるインスタレーションでもドローンは使われ、身体とテクノロジーの表現の可能性を開拓している。ダンスの演出だけでなく、サイバー・マジシャンのMarco Tempestとの共作のドローンを持ちいた手品のオンライン動画は、ディスプレイを注視させて話題となった。この正確に動くロボット群は、きめ細やかな作業が好きな日本人ならではの作風だ。
 
ライゾマティクス リサーチは2006年に設立された「ライゾマティクス」のR&D・メディアアート部門。毎回違った手法の作品の数々で驚かせてくれる。彼らの作品は、アート、広告、エンターテイメント、デザインなどジャンルを横断。提供された場に合わせつつ、洗練したアイデアを盛り込み好評を博す。世間的には最先端の技術を使った作家集団として紹介されがちだが、既存のテクノロジーに新しい視点を与える場合もあり、彼らの重要な点は技術に新しい視点を与えることや問題提起を盛り込んでいることが大きいだろう。
 
アート vs. コマーシャリズム

ライゾマティクス リサーチの中心人物は、プログラマーでありアーティストである真鍋大度。彼が注目されるようになったのは、ボディハック系と言われる作品の「Electric Stimulus to Face」から。プログラマーである真鍋大度本人が、筋電位センサーと電気刺激デバイスを用いて表情をコピーする実験プロジェクト。本人の身体を駆使したこのパフォーマンスは、マッドサイエンティスト的な一面も垣間見ることができ、ある意味倒錯した魅力に大勢が惹き付けられた。YouTubeでの140万ビューを発端に、世界10都市でパフォーマンスが行われ、日本ではCMに使われ、アート好きだけでなく一般層にまで認知される作品となった。本作のテーマは「ある人間の表情は別の人間にコピーできるか?」というのも興味深い点だ。新しさや物珍しさだけでなく、作品に明確なコンセプトがあること、それが作品の強度に繋がっている。
 
彼らの身体性とテクノロジーの結びつきを多く提示する。過去の作品事例を上げていくと、改造したスニーカーを曲げることで楽曲を演奏する「Nike Music Shoe」。近年ではハッキングした電動車椅子が自動で運転でステージ上で動き、ダンサーと踊る「border」など、身体との関連性が密な作品が多い。その言葉を介しない作品の数々は世界で評価され、世界各国の芸術賞や広告賞を受賞。輝かしい受賞歴の総計は100以上は数えられ、現在の日本における代表的なアーティストのひとつといえるだろう。
 
 
 
彼らの作品の魅力の根源を考えると、二点思い浮かぶ。まず、熱心な研究。過去のメディアアート作品への敬意を込め、例えば連続写真の歴史を踏まえるなど、作品を制作する上で必要な情報収集を徹底していること。彼らが収集した膨大なサーベイから導き出された努力の蓄積が作品となる。もう一点はチームワーク。数多くの大掛かりな作品は一人では作れない。集団作業の賜物でもある。制作のために合宿も行われるという徹底っぷりだ。そして、なによりも彼らを動かしているのは、好奇心が大きい。技術と表現、双方の未知の組み合わせをいかに研鑽してクオリティを高めるか。その他に類を見ない探究心によって、毎週のように作品が制作され続けられ、観るものは期待して止まない。