古典映画からドキュメンタリーまで:多様なウクライナの映画シーン

Kinosaal
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以下の推薦作品リストは、ウクライナ映画を対象とした唯一のストリーミング・プラットフォームTakflixの創立者・キュレーターであるナディア・パルファンのキュレートによるものです。記載されている作品は、ウクライナ映画を知る手がかりとなるよう選ばれており、古典映画、現代映画、劇映画、ドキュメンタリー映画を網羅しています。

古典映画

SHADOWS OF FORGOTTEN ANCESTORS(忘れられた祖先の影/火の馬) 
監督:セルゲイ・パラジャーノフ
公開:1964年
ジャンル:ドラマ、恋愛映画
コメント:ウクライナにおける詩的映画運動を代表する最重要作品。魔術的リアリズムの古典作品としても知られる。カルパチア地方を舞台に繰り広げられる「ロミオとジュリエット」の物語。

THE LOST LETTER(消えた手紙)
監督:ボリス・イヴチェンコ
公開:1972年
ジャンル:コメディー、恋愛映画
コメント:ウクライナの詩的映画作品。ウクライナ料理、文化、衣装、伝統のほか、ウクライナ民話に登場する悪魔などの魑魅魍魎が描かれる。

HUNT FOR THE COSSACK GOLD(コサックの黄金を探して)
監督:ヴァディム・カステリ
公開:1993年
ジャンル:コメディー、風刺
コメント:1990年代の古典作品。政治風刺の要素をはらみつつ、スパイ映画のパロディーの形で歴史上の神話を取り上げている。

現代映画(劇映画)

THE TRIBE(ザ・トライブ)
監督:ミロスラヴ・スラボシュピツキー
公開:2014年
ジャンル:犯罪ドラマ
コメント:ダイアローグを使わず、完全にウクライナ語の手話だけで撮影された初の映画作品。カンヌ国際映画祭を含む国際的な映画祭で20を超える賞を受賞した。

MY THOUGHTS ARE SILENT(私の思いは静寂)
監督:アントニオ・ルキッチ
公開:2019年
ジャンル:トラジコメディー
コメント:興行収入と観客の反応の観点から最も成功を収めた独立系ウクライナ映画。現代ウクライナにおける親子関係の物語。

ATLANTIS(アトランティス)
監督:ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ
公開:2019年
ジャンル:ドラマ、アポカリプス
コメント:ドンバス戦争後のウクライナの未来を取り上げた初の映画作品。第76回ヴェネチア国際映画祭で「オリゾンティ」部門作品賞を受賞。全ての役を兵士、退役軍人、ボランティアが演じている。

BAD ROADS(悪い道)
監督:ナタリア・ヴォロズビト
公開:2020年
ジャンル:戦争ドラマ
コメント: 脚本家としてロイヤルコート劇場、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで活躍していたナタリア・ヴォロズビトの監督デビュー作品。戦時下のドンバス地方を舞台とした5つの物語から構成されている。

STOP-ZEMLIA(ストップ・ゼムリア)
監督:カテリーナ・ゴルノスタイ
公開:2021年
ジャンル:ドラマ、恋愛映画
コメント:ティーンエイジャーの夢物語を描くカミング・オブ・エイジの物語。ベルリン国際映画祭でクリスタル・ベア賞、オデッサ国際映画祭でグランプリを受賞。

現代映画(ドキュメンタリー映画)

THE LIVING FIRE (生きている炎)
監督:オスタップ・コスチュク
公開:2016年
ジャンル:エコロジー、民族誌
コメント: 現代世界を生き残ろうとする伝統を描く抒情的ドキュメンタリー映画。カルパチア地方に暮らすウクライナ人羊飼い一家の3代にわたる物語。

HEAT SINGERS (ヒート・シンガーズ)
監督:ナディア・パルファン
公開:2019年
ジャンル/テーマ:トラジコメディー、音楽
コメント: ウクライナ西部の市営暖房会社 TeploKomunEnergoとその社内合唱団を追った人気のドキュメンタリー映画。ビジョン・ドゥ・リール(スイス)をはじめ、数多くの国際映画祭に出品。

THIS RAIN WILL NEVER STOP (やまない雨)
監督:アリナ・ホルロヴァ
公開:2020年
テーマ:戦争
コメント: 際限なく繰り返される戦争、長くは続かない平和を見つめた作品。シリア内戦を逃れた20歳のアンドリイと彼のクルド人家族は、ウクライナ東部の小さな町で新しい生活を始めるが、結局は別の軍事紛争に巻き込まれてしまう。白黒映像の迫力が観る者に迫る。

THE EARTH IS BLUE AS AN ORANGE(地球はオレンジのように青い)
監督:イリーナ・ツィリク
公開:2020年
テーマ:戦争
コメント:イリーナ・ツィリクはこの作品で2020年サンダンス映画祭「ワールドシネマドキュメンタリー」部門の監督賞を受賞した。ドンバスの戦闘地域に暮らす4人の子供を持つ母の物語。

(翻訳:中村有紀子)