2016/7/22 メルク「かけはし」文学賞

Merck-Kakehashi-Literaturpreis 2016 Merck-Kakehashi-Literaturpreis 2016

審査委員会の全員一致の決定により、第2回メルク「かけはし」文学賞は14件の応募の中から、イルマ・ラクーザの回想録『もっと海を』と、その翻訳者である新本史斉氏に授与されることになりました。

 

審査委員会の全員一致の決定により、第2回メルク「かけはし」文学賞は14件の応募の中から、イルマ・ラクーザの回想録『もっと海を』と、その翻訳者である新本史斉氏に授与されることになりました。
 
メルク社とドイツ文化センターは2016年秋、第2回メルク「かけはし」文学賞の授賞式を行います。この賞はドイツ語圏の文学作品を、日本の読者に広く読んでいただくために設けられました。
 
本賞は、ドイツ語圏の作家と現代文学作品を日本で広く日本で紹介するとともに、翻訳者の優れた業績を称えるものとして、1年おきに授与されます。作家と翻訳者には、それぞれ賞金1万ユーロが贈呈されます。
 
今年は10月20日19時よりドイツ文化会館ホールにて、メルク社経営執行委員会副会長のヨハネス・バイユー氏、ゲーテ・インスティトゥート総裁クラウス=ディーター・レーマン氏、そして審査委員長の土屋勝彦教授のご同席のもと、授賞式が開催されます。
 
新本史斉氏は、イルマ・ラクーザの自伝『もっと海を』の翻訳を行った理由として、この回想録の詩的でオーセンティックな描写に感銘を受けたからだと語っています。イルマ・ラクーザの作品は、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテが200年前に夢見ていた、国境を越えた世界文学の新たな形であり、独特の言語表現や他言語を取り込んで書き綴られる中で、多文化の共鳴が生まれています。イルマ・ラクーザは作品の中で、人生のそれぞれの局面を、言語や文化の異なるさまざまな国を通して描写しています。異なるものに対して非常にオープンな彼女の姿勢は、度々苦しみながらも次第に成熟していきました。2010年スイス書籍賞を受賞した『もっと海を』が、日本の読者の手もとにもようやく届けられることとなるでしょう。


審査委員長である土屋勝彦教授は、グローバルな時代において「越境性」という概念がますます重要になっているという点から今回の受賞決定を根拠づけています。イルマ・ラクーザはドイツ語圏の最も重要な越境作家のひとりであり、その代表作『もっと海を』は、文学批評家たちによれば、詩的言語の美しさ、ジャンルを超えゆく作品の有意義性、深遠な越境的経験という三つの特徴で際立っています。読者は、語り手とともにヨーロッパ諸国を旅行しながら、さまざまな言語・文化経験を共有し、青春期の追憶のあとを追っていきます。日本の読者は、いつの間にかヨーロッパ史と日本史の共通性と亀裂を追体験することになります。このように、イルマ・ラクーザ作品の翻訳は、日本の読者に、諸言語と諸文化の境界を越えゆく作家の声と歩みに触れる絶好の機会を与えてくれます。さらに提案者である新本史斉氏はイルマ・ラクーザの本を熟知し、すでにいくつかの翻訳を出版しており、作家の追憶断想の最適な翻訳者のひとりと見なすことができます。他にもいくつか興味深い応募案件がありましたが、審査委員一同、全員一致で今回彼の提案を受賞案と決定しました。


次回のメルク「かけはし」文学賞の公募は2017年9月です。お問い合わせは、東京ドイツ文化センター図書館長のバーバラ・リヒター= ヌゴガング、もしくは名古屋学院大学の土屋勝彦教授が受け付けています。
 
バーバラ・リヒター=ヌゴガング
東京ドイツ文化センター
図書館長
barbara.richter-ngogang@tokyo.goethe.org

土屋勝彦教授
名古屋学院大学
tsuchiya@ngu.ac.jp