講演とトーク ハインツ・ブーデ

 © Heinz Bude

2016年10 月27 日(木)19:00

ゲーテ・インスティトゥート東京 ホール

不安の社会

不安は変化の途上にある社会が置かれた精神状態を象徴し、計画通りの人生を送りたいがゆえに、より失敗のリスクを恐れるグローバル中流階級の心情を表している。長く続いた教育拡充による社会開放および職業分化の期間を経て、教育保護主義と職業の分裂による社会的閉鎖へと向かい始めたOECD 諸国において、この中流階級はいよいよ弱体化しつつある。
一方、世界経済の権力構造とエネルギー構造において重大なプレイヤーとなりつつある新興国では、そのような中流階級が台頭し、国際社会での新しいステータスを求めて、意義のある人生が約束された社会的な地位を求めるようになっている。不安は閉鎖されつつある中流階級にとっても開放されつつある中流階級にとっても、存在にかかわる問題であり、それは「可能性の先にある可能性としての自由という現実」(キェルケゴール)である。しかし、グローバル市場を目指す新しい大衆も不安に支配されている。それは日常の戦いを生き残れずに、リングから追い出されるかもしれないという不安である。不安が現在においてどれだけ肝心なテーマとなっているかは、世界的規模で政治領域に突入してきたポピュリズムを見れば明らかである。

ハインツ・ブーデ
1954 年生まれ。社会学者、大学教授。1992 年、ハンブルク社会研究所の研究員に就任、1997 年~2015 年、研究分野「ドイツ連邦共和国の社会」の主任研究委員。2000 年からは、カッセル大学マクロ社会学の教授。主な研究分野は世代研究と労働市場研究。多数の著書がある。「Gesellschaftder Angst (不安の社会)」は2014 年に出版された。

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