芸術文化が息詰まるとき

Kulturpolitik nach Corona

コロナ危機は2020年、ドイツの芸術文化シーンにどのような影響を与えているのだろうか?それに対して文化政策はどのような答えを出し、私たちが考えを進めるべき箇所はどこか?寄稿とプレスレビューを通してゲーテ・インスティトゥート東京は、現在の状況と将来への展望を探る。

寄稿


論評

ベルリン・アートウィーク(ターゲスシュピーゲル、9月13日)

​今年の第9回ベルリン・アートウィークは、ロックダウン以降街全体で実施された初の大規模イベントとなりました。実際に作品を展示できることから、ベルリンの関連各機関や美術館など過去最多の計35団体が参加しました。主催者は来場者数についても満足げです。マスク着用義務や人と間隔をとる規則が課されましたが、芸術作品を見る喜びを台無しにすることはなかったようです。


ブックフェアと権力(フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング、9月12日)

ドイツの二大書籍見本市が、開催に関する決定を発表しました。ライプツィヒ・ブックフェアは、例年3月の開催日程を天気が安定している5月へ変更。同会場には広大な屋外部分があり、コロナ禍でも大勢の入場が可能です。一方フランクフルト・ブックフェアは、今年の「物理的開催」を見送りました。事実上開催中止です。インターネット上の書籍展示に、今や出版社は仲介業者を必要としないからです。


Vereinzelung

ベルリンの文化施設を対象とする感染防止ガイドラインが改定され、客席での観客間の距離の確保が、1.5メートルから1メートルへと引き下げられました。ただし、観客は上演中もずっとマスクを外さないことが前提条件です。

ターゲスシュピーゲル、9月12日

国際支援基金 (9月11日)

​ゲーテ・インスティトゥートとドイツ外務省の発案により、コロナ禍にある外国の文化・教育分野団体を迅速に支援する国際支援基金が今夏創設されました。2020年9月から12月まで、計300万ユーロ(約3億6000万円)余の支援金が140件を超えるプロジェクトに提供されます。日本のプロジェクトも支援対象となっています。東京のNPO法人ホロコースト教育資料センター(通称ココロ)です。同センターが企画する想起の文化に関するレクチャーやワークショップについて、後日お知らせします。


「感染リスクは実質ゼロ」(フランクフルター・ルントシャウ、9月11日)

フランクフルトにあるムーゾントゥルム劇場が新たな装いを得ました。 劇場内に建設された構造物は、芸術に制約を与えているコロナ危機への対応として 考案されたものです。各「個室」には最大で2名が滞在することができます。 個室ごとに出入り口が用意されているため、「感染リスクは実質ゼロ」だと、 芸術総監督マティアス・ペースは言います。他の席の人と話したい場合に備え、 糸電話の貸し出しがあるそうです。この構造物を設計したのは、ベルリンの建築家集団 「ラウムラボア」。ラウムラボアは2017年、パフォーマンスプロジェクトで ゲーテ・インスティトゥート東京の空間的次元を探索しました。


Der gegenseitige Blick

人間は(…)社会の中でのみ孤独になり得る動物である。

カール・マルクス、1859年

安全なコンサート(フォーブス ジャパン、8月31日)

安全にコンサートを開催するためのアイデアは多くあります。しかし、それらの対策は実際にどれほど効果があるのでしょうか?将来的な大規模イベント実施の危険性をより正確に推定できるよう、ライプツィヒで行われたポップスター、ティム・ベンツコのコンサートで、ハレ大学病院が検証しました。例えば、手指の消毒の際にはマーキングのためのスプレーが合わせて使用され、人々が何の表面に触れているかが確かめられました。結果は9月中に公開される予定です。 


小規模事業者にも支援金(モノポール誌、8月26日)

ベルリン州政府によるコロナ即時支援金に、従業員2名以上の小規模・中規模文化事業者も応募できるようになりました。クラウス・レーダラー文化担当参事は、これによって、小規模な事業者から成り立っている文化シーンの支援が可能になると説明しました。支援は現在のところ、11月末まで行われる予定です。


展示 „Down to Earth“ (フランクフルター・ルントシャウ、8月16日)

ベルリンのマルティン・グロピウス・バウで開催中の展示 „Down to Earth“ は、環境汚染の当事者としてのアート業界を扱っています。過去数十年にわたり、アート業界は環境問題を避けてきた、とアーティストのティノ・セーガルは言います。そしてコロナ禍は、自然をとるのか、もしくは文化をとるのか、という問題を、人類に対し強烈にかつ新たな形突きつけたのです。


ベルクハインの未来 (ターゲスシュピーゲル紙、8月16日)

9月9日、ベルリンで最も有名なテクノクラブ、ベルクハインがついに再オープンします―ただし踊りの殿堂ではなく、展覧会場として。DJが再びパフォーマンスできるようになるまで、「スタジオ・ベルリン」と題してベルリン在住アーティスト85人の作品が展示されるといいます。ターゲスシュピーゲル紙が報じています。


Berghain

今こそ、クラブの未来の姿や、クラブが社会の中で果たしたい役割について話す絶好の機会なのです。

コンスタンツェ・マイヤー、イニシアチブ「クラブトピア」、8月13日モノポール誌とのインタビューで

映画館が支援求め書簡(南ドイツ新聞、8月15日)

コロナ危機中の閉鎖によって、ドイツでは多くの小規模映画館が経済的に非常に厳しい状況にあり、およそ半数が存続の危機に陥っています。モニカ・グリュッタース文化大臣に宛てた公開書簡の中で、映画館事業者らは経済援助と映画館サミットの開催を求めています。


クラブシーンの持続可能性(モノポール誌、8月13日)

コロナ禍で全てのクラブが閉鎖された今、そもそもクラブカルチャーについて話すことは必要でしょうか?イニシアチブ「クラブトピア」で持続可能なナイトクラビングを支援するコンスタンツェ・マイヤーは、モノポール誌のインタビューで次のように語っています。「ベルリンのクラブカルチャーは世界中の人を惹きつける重要な要素です。そして今、音楽に身を任せ浸る体験、多様性の経験が欠けています。ですから今こそ、クラブの未来の姿や、クラブが社会の中で果たしたい役割について話す絶好の機会なのです。」


Protestmarsch der Kulturschaffenden in Berlin (c) Dressing Ruhm & Söhne

芸術は社会の鏡像であり、動向や諸問題を明示し、過激化を予防し、意見の多様性を提示することで、民主主義をめぐる議論に貢献している。したがって、芸術を社会にとってエッセンシャルなものとして見なし、真剣に扱うべきだ。

アーティストによる抗議デモ行進ホームページより

ベルリンでアーティストによる抗議デモ行進(ナハトクリティーク、8月9日)

8月9日、ベルリンで様々な分野で活躍するフリーランスのアーティストが結束しデモを行い、アーティストのための労働時間短縮補償など、より長期的な視点での支援を求めました。演劇批評サイト「ナハトクリティーク」が報じています。


文化庁シンポジウムにゲーテ・インスティトゥート東京所長が参加(8月7日)

8月7日、文化庁アートプラットフォーム事業として開催される連続オンライン・シンポジウム「『コロナ以降』の現代アートとそのエコロジー」の第一回に、ゲーテ・インスティトゥート東京所長のペーター・アンダースが参加します。


Niemand kommt - Solidaritätsfestival (c) Niemand kommt - alle sind dabei

ベルリン州政府とベルリン州文化局が行ったことを強く歓迎します(……)しかし支援金は5日後には底をつき、連邦政府のプログラムに置き換えられました。

ダニエル・ブルネー、『誰も来ない』共同主催者、7月8日モノポール誌とのインタビューで

「いま行動しなければ休閑地しか残らない」(モノポール誌、7月20日)

連邦政府のフリーで活動するアーティストに対する理解が十分でないことに失望し、ベルリンの文化事業のインサイダー4人が7月31日、連帯を示す「非開催ーフェスティバル」を開催。チケット収入によって4人はフリーアーティストへの独自の支援行おうとしています。モノポール誌がイングリッシュ・シアター・ベルリンの運営者で主宰のダニエル・ブルネーに、なぜベルリンにとってフリーのアートシーンが重要であるか、そしてベルリンの連帯を必要としているか、インタビューしています。


連帯のフェスティバル(7月19日)

コロナの時代には、人前に立つことが命取りになり得ます。そのせいでフリーのアーティストは収入を断たれ、手続き上の理由で政府による給付金を受け取ることができない人も大勢います。そのため、7月31日にベルリンでは連帯を示すフェスティバル『誰も来ない』が盛大に「開催」。各分野のアーティストが「来ない」ことで開催されるこのフェスティバル、チケット収入はフリーアーティストたちに分配されます。


コロナ下の映画館(ヴェルト紙、7月15日)

モニカ・グリュッタース連邦政府文化・メディア大臣と映画監督のトム・ティクヴァが、ベルリン最古の映画館で、映画業界の未来について議論しました。未来はバラ色ではないようです。大ヒットドラマ『バビロン・ベルリン』も例外ではなく、ティクヴァは、今の段階ではその続編を考えることはできないと言います。なぜなら、映画撮影とは「制御された状況で無制御を解放するではないでしょうか?」パンデミック下で実現するとはあまり考えられません。


そして他国のアーティストの境遇は?(マキシム・ゴルキ劇場、7月12日)

ベルリンのマキシム・ゴルキ劇場は問います。世界的な危機の中、遠い国のアーティストはどのような境遇にあるのでしょうか?このプロジェクトの中心となるのは、個々人の体験の交換です。同劇場専属の俳優キンダ・ハメイダンが、ベイルートの社会科学研究者ヘダー・ハドゥールと対話します。彼の研究内容、シリアとレバノンにおけるコロナ・パンデミックの影響、そしてシリアのアーティストたちの現状などが語られます。


Gemeinsam gegen Corona (c) United Nations COVID-19 Response

この危機からの世界の復興、文化関連事業の復興、そして国際関係の復興には、世界中の人々が、自由に協力できることが不可欠である。

EUNIC (欧州連合文化機関)、6月8日

映画館の再開(南ドイツ新聞、5月18日)

ドイツでは、各州ごとに、COVID-19の安全対策を決めている。ヘッセン州とザクセン州では、大きな映画館も小規模な映画館も、間もなく営業再開が認められそうだが、その他の州では、まだ。その問題とは、一本の映画がドイツの半分の州でしか上映されないのであれば、配給収入が見込めないと。ドイツの映画館は、これからいったいどうなるのだろう。


美術館・博物館の再開(モノポール誌、4月23日)

ドイツは世界の中でも早い段階で美術館・博物館を再開しています。その際に重要なのは、訪問者や従業員の安全を、例えば新たな順路を設定することで確保することだけではなく、館のコンセプトから考え直すことです。ドレスデン美術館の総支配人、マリオン・アッカーマンは、雑誌『モノポール』とのインタビューで次のように答えています。「私たちは語りの新しい形を必要としています。それは人々にとってその時々に重要な事柄に触れるものでなければなりません。そして、「少ないものはより多い』という考えを身に付ける必要があります。」


今、文化の重要性は低いのか?(南ドイツ新聞、5月10日)

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は5月9日、ビデオ・メッセージでパンデミック後も、ドイツの広範にわたる様々な文化的状況を引き続き支援すると約束した。今後演劇やオペラなどでの衛生や安全面での基準を定める必要がある。


Merkels Videobotschaft: Unterstützung der Kultur

我々の目的は、広範にわたる多様な文化シーンが、大きな転換点であるこのパンデミックを克服した後も存続できることです。これは難しい課題ですが、連邦政府はこれを最優先課題と位置付けています。

アンゲラ・メルケル連邦首相、5月9日のビデオメッセージで