映画上映&トーク 【プレミア上映】小田香とシルヴィア・シェーデルバウアーによる新作短編映画

Kaori Oda, Sylvia Schedelbauer

2022/05/06 (金)

19:30

ゲーテ・インスティトゥート東京 ホール

unrest 62|22ーパパの映画への挑発 Part 1: 女性映画作家62|22

この回は満席となりました。

2022年、ゲーテ・インスティトゥート東京は開設から60周年を迎えます。東京で当館がドイツ語教育や日独の文化交流活動を開始した1962年は、第二次世界大戦後、日独両国でそれまでに形成された文化や政治・社会の構造が揺らぎ始めた時期に当たります。芸術の分野では、美的規範や固定化したプロダクションの構造も根本的に疑問視され、再定義されようとしていました。

ゲーテ・インスティトゥートは、「unrest 62|22(変動の時代62|22)」というプロジェクトタイトルの下、多くのものを生み出したこの変動の時代を、現代の視点から振り返るジャンル横断的なシリーズを順次開催します。

シリーズ第一弾は、映像作家の小田香とシルヴィア・シェーデルバウアーによる新作映画のプレミア上映です。ゲーテ・インスティトゥート東京の委嘱によって制作されたこれらの映画は、オーバーハウゼン(ドイツ)と東京で同時公開されます。この新作の中で、二人は今日の視点から1960年代の前衛映画に言及し、日本とドイツの両方における当時の男性優位の映画界に異なる視点を投げかけ、当時と現在の女性の役割を空想豊かに対比させます。上映後はオーバーハウゼンと東京の映画館をオンラインで結び、監督たちが対談を行います。

オーバーハウゼンは、世界最古の国際短編映画祭の開催地で、2022年は4月30日~5月9日に開催されます。

委嘱作品について

小田香『カラオケ喫茶ボサ』

カラオケ喫茶ボサ © Kaori Oda  2022年3月、じぶんに何がつくれるのか考えた。 ずっと続く新型コロナ感染症。 ロシアはウクライナを侵攻している。 多くの人間の日常が破壊され、人間が殺されている。 ひとりひとり名をもった人間の無数の命が、人間によって奪われている。 それを報道やSNSでみる私は、日本でじぶんの日常を生きている。 状況がかけ離れすぎていて、心が所在なく、地に足がつかない。 そのような心持ちのまま、この短編を撮った。 ここ数年とりくんでいる、人間の生痕やそこに宿る記憶、 私たちが存在し、存在したという痕跡が主題となる長編映画と同じ取り組みを、今回はより個人的に制作、撮影してみようと思った。 郊外にあるカラオケ喫茶ボサで、母は働いている。 近所のカラオケ好きな年配の人たちが集う場所だ。 未来への切望を詰め込んだ、タイムカプセルのような作品をボサで撮りたかった。(2022.3.29 小田香)

日本、2022年、13分、デジタル

シルヴィア・シェーデルバウアー 『元始、女性は太陽であった』

シルヴィア・シェデルバウアー「元始、女性は太陽であった」 © Sylvia Schedelbauer この実験映画は、日本の婦人参政権論者やフェミニスト、そして彼女たちの中で輝く太陽を称える個人的なオマージュである。示唆に富んだ以下の引用が、作品のインスピレーションとなった。「元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった。今、女性は月である。他に依って生き、他の光によって輝く、病人のやうな青白い顔の月である。私共は隠されて仕舞った我が太陽を今や取戻さねばならぬ」(平塚らいてう、1911年)
この作品は、日本ヌーヴェルヴァーグとオーバーハウゼン宣言の出された時期が、ゲーテ・インスティトゥート東京の開設と重なることから、その60周年を機に委嘱された。今日の視点から見て、それらのマニフェストの持つ意味を考察するよう依頼を受けた私は、当時の日独どちらでもあまり取り上げらることのなかった女性の存在に焦点を当てることにした。そしてこの作品は、婦人参政権論者やフェミニストへのオマージュとなった。これは、より平等な社会を目指して、過去も現代も奮闘を続ける女性たちに対する賛同と称賛である。(シルヴィア・シェーデルバウアー)

ドイツ、2022年、17分、デジタル
※この映画にはフラッシュの点滅が多分に含まれていますので、過敏な方はご注意ください。
 

プロフィール

小田香

小田香 © Kaori Oda 1987年大阪府生まれ。フィルムメーカー/アーティスト。
イメージと音を通して人間の記憶(声―私たちはどこから来て 、どこに向かっているのか―を探究する。
2013年、映画監督のタル・ベーラが陣頭指揮する若手映画作家育成プログラムであるfilm.factory (3年間の映画制作博士課程)に第1期生として参加し 、2016年に同プログラムを修了。2014年度ポーラ美術振興財団在外研究員。ボスニアの炭鉱を主題とした第一長編作品『鉱 ARAGANE』(2015) が山形国際ドキュメンタリー映画祭・アジア千波万波部門にて特別賞を受賞。その後、リスボン国際ドキュメンタリー映画際、マル・デル・プラタ国際映画祭(アルゼンチン)、台湾国際ドキュメンタリー映画祭などを巡る。2017年にエッセイ映画『あの優しさへ』が完成。ライプティヒ国際ドキュメンタリー&アニメーション映画祭ネクスト・マスターズ・コンペティション部門にてワールドプレミア上映。2019年最新作長編『セノーテ』が完成。山形国際ドキュメンタリー映画祭、ロッテルダム国際映画祭などに招待され各国を巡回。2020年、​第1回大島渚賞を受賞。2021年、『セノーテ』の成果により第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

シルヴィア・シェーデルバウアー

シルヴィア・シェーデルバウアー © Sylvia Schedelbauer

1993年よりベルリンを拠点に活動。主にアーカイブ映像やファウンド・フッテージを詩的に操作し、歴史と個人、つまり大きな物語と個々の心理的領域の間をつなぐという手法によって映画を制作している。シェーデルバウアーの作品はこれまでにベルリン国際映画祭、トロント国際映画祭、オーバーハウゼン国際短編映画祭、ロンドン映画祭、ニューヨーク映画祭及びロバート・フラハティ・フィルム・セミナーで上映された。
VG Bildkunst賞、ドイツ映画批評家協会賞及び最優秀実験映画に贈られるガス・ヴァン・サント賞などを受賞している。2019/2020年度にはハーバード大学ラドクリフ高等研究所のフェローを務めた。

 


 

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