ベルリンの壁崩壊30年
東ドイツの映画と歴史

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東ドイツの映画

2019年11月9日、ベルリンの壁が崩壊して30年を迎えます。この歴史的な出来事によって東ドイツが崩壊し、長年にわたり国民の生活や思想、文化、芸術活動に影響を与え続けた社会主義政策も終焉へ向かいます。
1946年、東ドイツに国営の映画製作会社として設立されたDEFAは、国による厳しい管理体制と検閲の下でも話題性と芸術性に優れた映像作品を数多く輩出し続け、注目を集めました。DEFA作品には、当時の東ドイツで暮らす人々の日常の姿とともに、夢や葛藤、希望がありのままに映し出されています。
ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都は、DEFA財団の協力を得て、この30周年を記念した特集上映を企画し、9本のアニメーション作品を含む計19作品をご紹介します。中でも、浚渫現場で作業員として働きながら、シンガー・ソングライターとして東ドイツで人気を博したゲアハルト・グンダーマンの生涯を描いた『グンダーマン』(2018年)は日本初公開です。監督のアンドレアス・ドレーゼン氏も来日し、今年ドイツ映画賞6部門で最優秀賞を受賞した同作品への思いを語ります。

 
DEFA(デーファ Deutsche Film-Aktiengesellschaft-ドイツ映画株式会社-)について

1945年第二次世界大戦末期ドイツが敗戦した後、西側を占領したアメリカ、イギリス、フランスの連合国はドイツで映画製作を始めるのは未だ早いと考えたが、東側を占領したソ連は異なる文化政策を行った。1945年10月末スターリンは、ソ連とドイツが共同で映画製作会社を設立する許可を与え、「フィルム・アクティブ」という作業チームを設置させた。映画産業再開の準備は順調に進み、1946年2月に戦後初の週刊ニュースDer Augenzeuge(目撃者)をベルリンで公開するに至った。同年5月4日には、ヴォルフガング・シュタウテ監督が劇映画Die Mörder sind unter uns(殺人者は我々の中にいる)の撮影を開始した。
正式なDEFAの創設は1946年5月17日、戦前ドイツ映画の黄金期を築いたUFA(ウーファUniversum-Film-Aktiengesellschaft)の関係者らが中心となり、ポツダム=バーベルスベルクの撮影所を拠点として、映画製作を本格化した。1990年の東西ドイツ統一前、DEFA社には約40名の監督、4000名を超える従業員が所属し、1992年にその歴史を閉じるまで、1000本以上の劇映画、約950本のアニメーション、3000本以上のドキュメンタリー、2500本に及ぶニュース映像を製作していた。DEFA作品のジャンル、内容の豊富さ、芸術性の高さは、まさに「壁の向こうのハリウッド」と呼ぶにふさわしい。
現在、DEFA撮影所で製作された全作品の権利は、1998年に設立されたDEFA財団が所有し、過去となった東ドイツの映像文化遺産を、国内だけでなく広く世界に紹介している。

山根恵子

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