レクチャーとトーク ゲルハルト・リヒター
《ビルケナウ》についての考察

Birkenau 《ビルケナウ》2014、ゲルハルト・リヒター財団所蔵 © Gerhard Richter 2022 (07062022)

2022/08/20 (土)

17:00

ゲーテ・インスティトゥート東京 ホール

東京国立近代美術館/ゲーテ・インスティトゥート東京共同企画

お申込み多数につき、参加申込みは終了させていただきましたが、当日の内容をこちらのリンク(ZOOM Webinar)からご視聴いただけます。
視聴無料(先着500名)、事前登録不要

(※先着での受付としております。定員に達した場合、ご視聴いだけないのでご了承ください。)

《ビルケナウ》(2014)は、東京国立近代美術館で現在開催中のゲルハルト・リヒター展の中心的作品です。リヒターにとっての近年の最重要作品と位置付けられる本作は4枚の油彩の抽象画で、タイトルの《ビルケナウ》は、ナチスドイツ時代の絶滅収容所であったアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所(現ポーランド)に由来します。リヒターは当初、その収容所の様子をユダヤ人捕虜が隠し撮りしたという4枚の白黒写真をもとに絵画を描いたものの、その後、絵具を塗り重ね、これら抽象絵画を完成させました。

東京国立近代美術館の展示では、作家本人との密接なやりとりの上、その意図を反映して、油彩と油彩画の複製写真を向かい合わせに対峙させ、上記の4点の記録写真の複製や大きなグレイの鏡作品などを伴って、会場全体を一種のインスタレーション空間のように構成しています。

今回のトークでは、この作品の制作過程から展示の変遷を追い、記憶の想起力などドイツの歴史の文脈の中で作品をとらえることで、この重要な作品が現代に問いかける問題に接近します。

ゲストは長年、リヒターの画業に密着して論考してきた国際的なキュレーターのディーター・シュヴァルツ氏(オンライン出演)、ならびにドイツ文学・歴史研究の立場からリヒターの作品について考察する西野路代氏です。司会は、今回の展覧会の担当者である東京国立近代美術館の桝田倫広主任研究員です。

プログラムの最初には、ピアニスト、ヤーノシュ・ツェグレディ氏による自身の作品《Three Evocations》の演奏があります。ツェグレディー氏は今年85歳で、1967年から日本で活動しています。本人はナチスの時代をワルシャワのゲットーで生き延び、両親はマウトハウゼンとリヒテンヴェルトの強制収容所から奇跡的な生還を遂げました。

登壇者プロフィール

ディーター・シュヴァルツ Dieter Schwarz
現代美術のキュレーター、作家。1953年チューリヒ生まれ。チューリヒでドイツ文学、フランス文学、言語学、比較文学を学び、1981年に博士号を取得。1985~1990 年、ヴィンタートゥール美術館学芸員。1990~2017年 ヴィンタートゥール美術館館長。2016年よりトーマス・シュッテ財団彫刻館キュレーター。近現代美術の展覧会のキュレーションや出版物多数。メニル・ドローイング研究所の相談役、トーマス・シュッテ財団、マッティオリ・ロッシ財団の理事を務める。
2022年6月発売の『美術手帖』7月号には、同氏の「[論考]ふたたび始めること ──ゲルハルト・リヒターの新作抽象絵画」が掲載されている。

西野 路代(にしの みちよ)
1971年生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科独文学専攻博士課程単位取得。東京都立大学人文社会学部、大妻女子大学比較文化学部、フェリス女学院大学国際交流学部非常勤講師。専門はローベルト・ムージルを中心とするドイツ現代文学。日本での《ビルケナウ》展示に際し、『美術手帖』(2022年7月号)に「イメージと倫理の位相──ゲルハルト・リヒター《ビルケナウ》とアウシュヴィッツ」を、『ユリイカ』(2022年6月号)に「《ビルケナウ》の白いページ──ゲルハルト・リヒター『93のディテール』試論」を寄稿。他に『後退する過去:ケルン大聖堂のステンドグラス』(2015年)、『カンバスという盾:ゲルハルト・リヒターの芸術と「民主主義」の意味』(2020年)など。

桝田 倫広(ますだ ともひろ)
東京国立近代美術館 主任研究員
1982年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科美術史学専攻博士後期課程単位取得退学。
関わった主な展覧会として「ゲルハルト・リヒター展」(2022)、 「ピーター・ドイグ展」(2020)、「アジアにめざめたら:アートが変わる、世界が変わる 1960–1990年代」(共同キュレーション、東京国立近代美術館、韓国国立現代美術館、ナショナル・ギャラリー・シンガポール、2018–2019)、「No Museum, No Life?―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」(共同キュレーション、2015)など

 

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