梶谷真司先生と共に行う思考の散策シリーズ
ドイツには豊かな生活文化が根付いています。本トークシリーズでは、その中でも特に
食、住、移動の文化的・社会的側面について、それぞれの分野の専門家をゲストに迎えて、日独の視点から哲学的な考察を試みます。ただし観念的で難解な哲学言葉を使った専門家の対談に終始するのではなく、平明な言葉で視聴者からの質問や意見をリアルタイムで取り上げ、哲学(philosophia, 愛+智)するという行為の発端を皆さんに実際に体験していただきたいと思います。「考える専門家」である哲学者の助けを借りて、これらの生活文化の過去と今後のトレンドにアプローチをすることで、私たちの未来への提言やヒントがみつかるかもしれません。シリーズ3回(予定)で毎回、梶谷真司東京大学教授がナビゲータを務めます。
視聴者の皆様からの積極的な質問も受け付けております(当日Chatで投稿先リンクをご案内します)。
第二回
日独の「住まい」を哲学する ー アンネとセバスチャンをゲストに
ドイツの生活文化を扱う哲学トークシリーズ二回目。第一回ではドイツの「食」を扱いましたが、第二回では「住」をテーマに、東京在住のドイツ人建築家カップル、アンネ・グロスさんとセバスチャン・グロスさんをゲストに迎えて、トークを行います。全体の進行を務めるのは梶谷真司さん(東京大学、共生のための国際哲学研究センター長)です。
ベルリンからやってきた二人はトップブランドが軒を連ねる青山や表参道でもなく、若者に人気の中目黒でもなく、東京の下町、荒川区のとある商店街にスタジオ・グロスを構えて独立を果たしました。2019年のことです。付近には個人商店や町工場、銭湯もまだあちこちに残っていて、近所の人々が日々汗を流し洗濯をし、情報交換をする場ともなっています。仕事と生活が密接に結びついた地域で、お年寄りから子どもまで様々な年代、職業の男女が通りを行き交い、多様性にあふれています。アンネとセバスチャンはそのコミュニティーの一員として町会費を払って商店街の組織に参加し、仕事をし、時には仕事場をギャラリーとして開放し、アーティストと地域住民をつないだりもしています。2019年から彼らの活動の中、このコロナの時期、近所付き合いが一層深まり、地元の委託を受けて建て替え工事を請け負ったりもしています。
その暮らしは、ドイツ、ベルリンでの暮らしと比べてどこに違いがあるのでしょうか。彼らが住んでいたベルリンのフラットと、東京の一軒家という住居を比較し、またドイツ人の目を通して日本の下町の建物、風景、人々の暮らしを追体験することで、わたしたちにとっても新しい発見がたくさんあるに違いありません。舎人ライナー、交番、銭湯、商店街といったキーワードが東京下町発見の手掛かりになるでしょう。
トークに先立っては、自らもベルリンに暮らした経験のある梶谷真司さんが、二人とともに下町散策を行いました。その映像を交えながら、当日は3人で話題を深めていきます。
アンネ・グロス & セバスチャン・グロス
© Studio GROSS
ベルリン出身、東京在住の建築家カップル。建築関係の仕事や研究の傍ら、映画、写真、グラフィックなどを手掛ける他、キュレーターとしても活動している。異文化交流の経験を踏まえて、2019年にスタジオ・グロスを設立。
スタジオ・グロス:東京の下町、荒川区熊野前商店街の一角にあった空き家を改修して、仕事と生活、そして情報発信の場としている。そのビジョンは、建築と地域が近づく実験的空間を作ること。近隣のコミュニティーと専門家を結んで、東京の増え続ける空き家問題に取り組み、それについてのオールタナティブで集団的なコンセプトを提案する。同時に、アンネはスイスの社会学者ルツィウス・ブルクハルトが提唱した Strollology(散策学)を研究テーマとし、風景や都市空間、建築と都市計画の新しいビジョンに取り組んでいる。
梶谷真司教授
Photo by Kyoichi
東京大学、共生のための国際哲学研究センター長。哲学対話を通して、多くの人々が日々の疑問について考え直す機会を作ってきた。大学での活動以外に、宮崎県高千穂の農業遺産を擁する地域社会や五ヶ瀬中等教育学校の生徒たちと距離や年代を軽々と飛び越えた交流を行うなど、「行動する」哲学者でもある。
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